― 昭和の鉄と令和の修理人 ―

【1】40年動き続ける「いぐさ織機」

修理の依頼で訪れた農家さんの作業場には、昭和50年代に製造された大型のいぐさ織機が、今も現役で稼働しています。見るからに年季が入った鉄骨フレーム、手書きの注意書き、時代を感じさせる配線とモーター。しかし、驚くほど静かに、美しいリズムで動いています。

私と同級生です。(50代)
修理前:根どまり、あるいは中どまりと言って根の白いところが表面に入って商品価値がありません。
修理後:表面がまだらになってなく、違和感が感じられません。

「この機械、親父の代からずっと使ってるんですよ」。そう語る農家さんは「父の後ろ姿を見ながら織機の使い方を学んだ。そしてケンカしながらも修理したこともあったな!」と、そんな思い出を話してくださいました。私の仕事は、この“世代を超えて使われる道具”の調子を整えること。古いからといって新しくするのではなく、“活かしながら守る”という視点が、いぐさ文化には欠かせません。

【2】マニュアルには載っていない修理

古い機械には、当然ながら部品がありません。メーカーもすでに廃業していたり、図面も残っていなかったりすることがほとんど。だから私は、現物を分解し、手持ちのジャンクパーツや鉄板を使って“再現”するような修理を行います。感覚と経験、そして失敗の繰り返しが、この仕事の要です。

また、機械の音や振動を感じながら、どこが“ご機嫌ななめ”なのかを探っていく作業は、まるで会話をしているようでもあります。マニュアル通りにはいかない。でも、手をかければ必ず応えてくれる。そんな職人の手仕事が、ここにはまだ息づいています。

修理内容:藺草加湿機の底の損傷がひどく水漏れの状態
これをそのまま放置しておくと藺草自体に加湿が効かなくなり【1】の織機で製織していく工程作業で効率が悪くなります
修理前:この部分から水漏れ(4か所)
修理後:専用のパテで埋めて、グラスファイバーで補強する。

【3】残す理由、それは人の記憶にある

なぜ古い機械を直してまで使い続けるのか。私はそれが「効率」だけではないと思っています。その機械と一緒に積み重ねてきた時間や、親から子へと受け継がれてきた技術、失敗したときの悔しさや、うまく仕上がったときの達成感——そういった“記憶”が詰まっているからです。

いぐさ文化を継承するというのは、1人では成し遂げることが出来ません。藺草に関わっている方々の想いがあるからこそ可能だと、私自身そう感じています。

2025年11月1日

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