
かつては畳の材料として地域一帯を覆っていた藺草も、この20年以上は需要が右肩下がりです。それでも先祖代々受け継いできた田んぼを守るため、作付けを減らしながらも細く長く栽培を続けています。静かな田園風景の裏側には、そうした家族の葛藤があります。

専用の苗掘り機を操るのは3代目の息子さん。収入だけを考えれば藺草一本は難しい時代ですが、「この景色だけは残したい」との思いで、早朝から機械の音を響かせながら黙々と作業を続けています。未来を託された若い背中が、産地の明日を支えています。

お母さんと若奥さんが、腰をかがめて一本一本、苗を割る作業を進めます。指先はいつも土と水にさらされていますが、「私たちにできることは丁寧に仕上げることだけ」と、家族総出で出荷までの工程を支えています。

藺草だけでは経営が厳しく、2代目のお父さんはカセットに苗を詰めるかたわら、ブロッコリーなど野菜の出荷準備にも追われています。伝統作物と収益性の高い作物をどう両立させるか、日々試行錯誤が続いています。

本田への田植えが始まりました。収入は全盛期の頃とは比べものになりませんが、「やめてしまえば二度と戻らない」と、黙々と苗を差し込み続ける背中があります。厳しい現実の中でも、技と誇りは絶やさず受け継がれています。

減り続ける畳の需要に合わせて、周囲の田んぼや畑にはキャベツなど別の作物も増えてきました。それでも藺草の列を残し、「全部はやめない」と決めて作付けを続けています。天候や価格に振り回されながらも、産地として生き残る道を探り続けています。
2025/12/01
