― 掃除・交換・そして新しい1年 ―

【1】畳を替えて、新年を迎える

12月に入ると、「年内に畳を張り替えたい」という依頼が急に増えます。日本では昔から、年末に家を清めて新年を迎えるという習慣がありますが、畳の張り替えもその一つ。年の終わりに新しい畳の香りで部屋を満たし、心機一転で一年を迎える——そんな風景が、今も静かに残っているのです。

私の仕事は修理屋ですが、この時期になると織機や乾燥機がフル稼働している現場を支えるため、点検と調整に奔走します。

調子の悪い1台が止まるだけで、納品スケジュールが狂ってしまう。だからこそ、“12月の一手”はとても重く、真剣なのです。

【2】「まだ使える」の境目

年末の畳交換でよくあるのが、「まだ使えるけれど、替えるべきか迷っている」という相談です。確かに、見た目に大きな傷みがなくても、いぐさがへたって弾力を失い、香りも感じにくくなっていることがあります。私はそんな時、無理に交換を勧めることはしません。理由はただ一つ。「畳は消耗品ではなく、“気持ちを整える道具”でもある」からです。

新しい年を迎えるにあたって、身の回りを整えることは、気持ちのリセットにもなります。そういう意味で、畳の張り替えは“心の掃除”にもなるのかもしれません。見た目だけでなく、感覚や気分を整えるための選択。それが畳の持つ力です。

【3】いぐさの香りとともに締めくくる

私が畳に惹かれる理由のひとつに、「終わりと始まりがセットでやってくる」という感覚があります。張り替えられた畳が並んだ部屋を見ていると、ただの内装ではなく、一年の記憶や思いがそこに積もっていたことに気づかされるのです。

いぐさの香りが立ち上がる瞬間、新しい畳に座るとき、どこかで誰かが「今年も無事に過ごせたな」と思ってくれるなら、それが私の仕事の意味です。

12月は忙しい。でもそのぶん、「今年もやりきった」と心から思える季節。私は今日も、静かに機械のねじを締めながら、また新しい年に向けての一歩を準備しています。

2025年12月1日

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