― なぜ今も畳は呼吸しているのか ―
【1】湿気の季節に思い出す、畳のちから
6月といえば梅雨。湿気がまとわりつくような日々が続きます。雨の日は、古い家屋に住んでいると、畳の香りがより濃くなることに気づくものです。それは決して不快ではなく、むしろ心が落ち着くような感覚になります。調べてみると、畳の原料である「いぐさ」には空気中の湿気を吸収したり放出したりする「調湿機能」があるというのです。
畳は「呼吸している」と言われるのは、この機能のことを指しています。現代の住まいではフローリングが主流になっていますが、湿気の多いこの季節になると、昔ながらの畳のありがたさを再認識するのです。

【2】いぐさの力と、職人の知恵

いぐさは1本1本が細く柔らかいため、簡単に折れてしまうように見えますが、実際にはとても丈夫です。水辺で育ったいぐさはしなやかで、乾燥しても適度な弾力を保ちます。この性質こそが、畳の踏み心地の良さや耐久性につながっています。
しかし、いぐさの良さを最大限に引き出すには、機械だけではどうにもなりません。編み込みの角度、乾燥の度合い、そして張り替えのタイミングなど、細やかな判断が必要です。私は機械を直す側の人間ですが、職人さんたちの手さばきを見ていると、まるで自然と会話しているように見えることがあります。いぐさの声に耳を傾ける、そんな知恵と経験の蓄積が、畳の質を左右するのです。
【3】今こそ畳に触れてほしい理由
畳は古い、というイメージを持つ人も多いかもしれません。でも実際には、いぐさの香りがストレスを軽減することや、空気をきれいにする力があることが科学的にも明らかになってきています。特に、窓を開けられないようなジメジメした梅雨の時期には、その効果を感じやすいでしょう。
だからこそ、私はこの時期になると「畳のある暮らし」を伝えたくなります。たとえ一部屋だけでも、畳の部屋を持つことは暮らしの質を高めるきっかけになります。職人が手をかけ、自然と対話しながら作り上げた畳の一枚には、日本の気候に寄り添う智慧と美しさが詰まっているのです。

2025年6月1日
