― 壊れた機械を直す“いぐさ屋”の日常 ―
【1】いぐさ刈り前の事前準備
いつだったでしょうか、ある日のことです。いぐさ刈り前に点検・準備作業していたある生産者さんから連絡が入りました。「乾燥機の乾燥を効率よくするために修理してくれんどか?部品の材料はホームセンターで買って来るけん」。自分で出来るか不安だったがお客さんの役に立てればと、即二返事で了承しました。乾燥効率がいまひとつ良くなかった原因は、昭和時代から使っている乾燥機の不具合部分。部品の在庫はなく、代用品を調達してもらって即座に加工し、応急処置を施しました。生産者さんの反応は?「上出来、上出来たい!」。

【2】技術よりも、人を見る

いぐさ機械の修理と聞くと、専門的な知識や工具の使い方ばかりが注目されがちですが、実は「人を見る力」も欠かせません。この農家さんはどの作業に時間をかける人なのか、どこに妥協しやすいか。逆に、どこに絶対的なこだわりを持っているのか。そうした「クセ」を理解していないと、同じ機械でも調整の仕方がまったく変わってくるのです。
私は毎回、修理をしながら会話を重ねます。「今朝は、空気が乾いとったですね」、「去年と育ち方が違いますね」——そうした雑談の中に、大事なヒントが隠れている。人がいて、道具があって、はじめて機械が生きる。修理とは、単なる技術ではなく“対話”しながら農家さんたちが、少しでも豊かになれるように想いを馳せて。
【3】失われつつあるものを、つなぐ
いぐさ機械の多くは、すでに製造が終了して久しく、メーカーのサポートも受けられません。私は解体した機械のパーツを保存し、必要があれば加工して再利用することで、延命させています。それは、過去から預かったものを未来へつなぐ、ひとつの使命でもあります。
世の中は効率化と新しさを求めることが自然ではありますが、畳やいぐさのような文化は、「直して使う」ことによって深みが増していくのだと思います。私はこれからも、この小さな“いぐさ屋”だけど頼られる存在であり続け、この地元から未来に向けて静かに手を動かしていきたい。そんな思いで、今日もまた工具を握っています。

2025年7月1日
