11月下旬〜12月上旬に来年の収穫に向けてスタート

かつては畳の材料として地域一帯を覆っていた藺草も、この20年以上は需要が右肩下がりです。それでも先祖代々受け継いできた田んぼを守るため、作付けを減らしながらも細く長く栽培を続けています。静かな田園風景の裏側には、そうした家族の葛藤があります。 専用の苗掘り機を操るのは3代目の息子さん。収入だけを考えれば藺草一本は難しい時代ですが、「この景色だけは残したい」との思いで、早朝から機械の音を響かせながら黙々と作業を続けています。未来を託された若い背中が、産地の明日を支えています。 お母さんと若奥さんが、腰をかがめて一本一本、苗を割る作業を進めます。指先はいつも土と水にさらされていますが、「私たちにできることは丁寧に仕上げることだけ」と、家族総出で出荷までの工程を支えています。 藺草だけでは経営が厳しく、2代目のお父さんはカセットに苗を詰めるかたわら、ブロッコリーなど野菜の出荷準備にも追われています。伝統作物と収益性の高い作物をどう両立させるか、日々試行錯誤が続いています。 本田への田植えが始まりました。収入は全盛期の頃とは比べものになりませんが、「やめてしまえば二度と戻らない」と、黙々と苗を差し込み続ける背中があります。厳しい現実の中でも、技と誇りは絶やさず受け継がれています。 減り続ける畳の需要に合わせて、周囲の田んぼや畑にはキャベツなど別の作物も増えてきました。それでも藺草の列を残し、「全部はやめない」と決めて作付けを続けています。天候や価格に振り回されながらも、産地として生き残る道を探り続けています。 2025/12/01

藺草人日記#3|梅雨と畳と、職人の手

― なぜ今も畳は呼吸しているのか ― 【1】湿気の季節に思い出す、畳のちから 6月といえば梅雨。湿気がまとわりつくような日々が続きます。雨の日は、古い家屋に住んでいると、畳の香りがより濃くなることに気づくものです。それは決して不快ではなく、むしろ心が落ち着くような感覚になります。調べてみると、畳の原料である「いぐさ」には空気中の湿気を吸収したり放出したりする「調湿機能」があるというのです。 畳は「呼吸している」と言われるのは、この機能のことを指しています。現代の住まいではフローリングが主流になっていますが、湿気の多いこの季節になると、昔ながらの畳のありがたさを再認識するのです。 【2】いぐさの力と、職人の知恵 いぐさは1本1本が細く柔らかいため、簡単に折れてしまうように見えますが、実際にはとても丈夫です。水辺で育ったいぐさはしなやかで、乾燥しても適度な弾力を保ちます。この性質こそが、畳の踏み心地の良さや耐久性につながっています。 しかし、いぐさの良さを最大限に引き出すには、機械だけではどうにもなりません。編み込みの角度、乾燥の度合い、そして張り替えのタイミングなど、細やかな判断が必要です。私は機械を直す側の人間ですが、職人さんたちの手さばきを見ていると、まるで自然と会話しているように見えることがあります。いぐさの声に耳を傾ける、そんな知恵と経験の蓄積が、畳の質を左右するのです。 【3】今こそ畳に触れてほしい理由 畳は古い、というイメージを持つ人も多いかもしれません。でも実際には、いぐさの香りがストレスを軽減することや、空気をきれいにする力があることが科学的にも明らかになってきています。特に、窓を開けられないようなジメジメした梅雨の時期には、その効果を感じやすいでしょう。 だからこそ、私はこの時期になると「畳のある暮らし」を伝えたくなります。たとえ一部屋だけでも、畳の部屋を持つことは暮らしの質を高めるきっかけになります。職人が手をかけ、自然と対話しながら作り上げた畳の一枚には、日本の気候に寄り添う智慧と美しさが詰まっているのです。 2025年6月1日

藺草人日記 #2|いぐさの季節がやってきた

― 田んぼじゃなくて畳に生きる植物 ― 【1】水辺で育つ「いぐさ」、畳として生きる 5月になると、熊本県の八代平野の田んぼに水が張られ、田植えの季節がやってきます。その風景を見るたびに、私は少しだけ胸が高鳴ります。なぜなら、私たちが扱う「いぐさ」も、水田で育つ植物だからです。ただし、いぐさはお米とは違い、「食べるため」ではなく「暮らすため」に育てられてきたという点が、他の作物とは大きく異なります。 いぐさは、田んぼのような湿地帯で栽培され、乾燥させてから畳表に加工されます。昔から日本人の生活に欠かせない自然と調和したこのいぐさは、見た目は細く頼りなくとも、実はとても頑丈で調湿性にも優れており、今のようにエアコンのない時代では、夏の快適な住まいを支えていました。 【2】「畳」は文化であり、生活の知恵だった 現代の住宅事情では、畳のある部屋が減ってきましたが、それでもなお、いぐさの香りや手触りには、多くの人がどこか懐かしさを感じるようです。私自身も、畳の香りを嗅ぐと、祖父母の家を思い出します。いぐさは、目に見えない形で記憶と感情に結びついている植物なのかもしれません。 そして、畳の持つ力はそれだけではありません。いぐさには空気中の湿度を吸ったり吐いたりする「調湿作用」があり、さらにアンモニアなどの臭いを吸収する働きもあります。これはまさに、自然が作り出した「呼吸する床」。日本の気候に合った生活の知恵が詰まった素材です。だからこそ、私は今もこの仕事を続けているのだと思います。 【3】いぐさを繋ぐ仕事、それが私の役割 私は、いぐさを「育てる」人間ではありません。ですが、いぐさを「使う」ための機械を修理することで、この文化に関わり続けています。昭和の時代に作られた機械が多く、今や部品も手に入りにくい中、それでも直してほしいという声がある限り、私はこの仕事を続けます。いぐさという植物、畳という文化、そしてそれを支える機械や人。どれが欠けても、この世界は回りません。私自身は「いぐさ博士」ではありませんが、「いぐさに詳しい人になりたい」という気持ちは、本物です。この連載を通じて、自分自身の学びを深めながら、少しでも多くの方にいぐさの魅力を伝えていけたらと思います。 2025年5月1日

国産イグサを守ろう! ~熊本県議会へのメッセージで、伝統文化を未来へつなぐ~

■熊本県議会へあなたの声を届けませんか? 熊本県の伝統産業であるイグサ。畳の原料として、私たちの生活に深く関わっていますが、近年、生産者の高齢化や後継者不足、海外製品との競争など、多くの課題を抱え、その対応を行っています。 そこで、この問題に取り組んでくださっている\熊本県議会い業振興議員団・会長の坂田孝志先生/から、「熊本県いぐさ・畳の振興に関する条例(仮称)」素案にかかるパブリックコメントの実施についてご案内がありました。 ■メッセージを送ろう! ・イグサ農家の方々へ・イグサを愛する全ての方々へ 「イグサ農家〇〇です。このような条例が出来ると農家としてもありがたいですし、意見を聞いていただけることはありがたいです」「国産イグサを残してほしい!」「伝統文化を守っていきたい!そういった熱い想いを、ぜひ熊本県議会事務局へお寄せ下さい。業界関係者の方だけでなく、一般の方からのメッセージも大歓迎です! 皆様の声が、イグサ農家の方々のその後の発展となり、今後の政策に反映されるかもしれません。 ●ご意見の提出方法及び提出先 ご意見については、住所、氏名(団体としてのご意見であれば団体名)及び電話番号等の連絡先を記載のうえ、次のいずれかの方法により提出してください(様式は問いません)。(1) 電子メールの場合: メールアドレス gikaiseimu@pref.kumamoto.lg.jp (2) FAXの場合: FAX番号 096-384-8896 熊本県議会事務局政務調査課あて(3) 郵送の場合: 〒862-8570 熊本市中央区水前寺6-18-1 熊本県議会事務局政務調査課あて 今回の共同呼びかけ人・和鹿島藺草人部会/縁(えにし)・「藺草人+」主宰/尾下正克(おした織機製作所) メッセージの募集期間令和7年2月20日木曜日から3月13日木曜日まで(必着) ■熊本のイグサを守るために、今できること 今回のメッセージ募集は、「和鹿島藺草人部会」の縁(えにし)さんが発起人となり、「藺草人+」のHPで宣伝協力させていただいております。 皆様の熱いメッセージが、熊本のイグサを守り、伝統文化を未来へ繋ぐ力となります。ぜひ、あなたの声を熊本県議会へ届けてください! 本WEBサイトでも皆様のコメントを随時受け付けております。下の「コメントを残す」から皆様の投稿をお待ちしております。